産地だより 2020年10月

JA三原せとだ 柑橘販売課

2020年10月
広島県尾道市 JA三原せとだ 柑橘販売課(レモン)
代表生産者 原田 悟さん(運営委員会会長)

今回の産地だよりは、広島県尾道市瀬戸田町でレモンを栽培している協力農家さんの原田 悟さんをレポートします。
広島県尾道市瀬戸田町は、瀬戸内海に浮かぶ芸予諸島の生口島の大部分と、高根島からなります。生口島の全域は、尾道市ですが、南東部は旧因島市域となり、東側は尾道市の因島となります。
北側は三原市の佐木島で、南から西側にかけて愛媛県今治市となり、西隣が大三島、南側に岩城島や伯方島など、たくさんの島々が点在しています。
また、瀬戸田町の西端には瓢箪島があり、北側半分が瀬戸田町内となります。
たくさんの島々が点在する瀬戸内の温暖な気候に育まれ、太陽の光をいっぱいに浴びた瀬戸田レモンのおいしさと人気の秘密について、少しずつご紹介していきたいと思います。

尾道市瀬戸田町とは?

広島空港から車で出発し、因島大橋、生口橋を渡り、しまなみ海道を走って尾道市瀬戸田町に向かいます。
瀬戸田町は、古くから塩の生産が行われ、現在は、柑橘類が名産となっています。地形は、生口島最高峰の観音山から伸びる稜線によって南北で分かれていて、北側は比較的緩やかな傾斜で、南側は逆に急傾斜となっています。
瀬戸田町は、古くからの港町、門前町です。生口島と高根島の間の海峡である瀬戸田水道周辺にあり、町の中心となっています。
町の中心地の地名でもある瀬戸田の由来は、瀬戸を埋め立てて田を作ったことが、『瀬戸田』という地名の由来になったそうです。
また、高根島の北側は自然海岸が続き、生口島とは瀬戸田水道に架かる高根大橋で結ばれています。

因島大橋

因島大橋

因島大橋のケーブル断面図とアンカーフレームの模型

因島大橋のケーブル断面図とアンカーフレームの模型

尾道市瀬戸田町巡り!!ビーチに作品?

瀬戸田レモンのおいしさと人気の秘密を探る前に、尾道市瀬戸田町巡りをしたいと思います。
瀬戸田町は、盛りだくさんの観光スポットがあります。珍しい手法が駆使された建築物と、博物館や美術館など、観光を満喫できる歴史と文化の町です。
特に感銘を受けたのは、島ごと美術館であることです。生口島や高根島を歩いていると、いたるところに現代アートを見つけることができます。
これらの作品は、アーティストが島のなかにみずから場所を選び、風景から受けたインスピレーションを形にして設置されたとのことです。
1989年から開催された世界一小さなアートプロジェクト「瀬戸田ビエンナーレ」によって設置された作品は17作品あり、作品ごとに名前があります。
島の風景に溶け込み、遊び心と芸術性を兼ね備えた作品は、瀬戸田町の象徴と言えるでしょう。

サンセットビーチにある作品その1『空へ』

サンセットビーチにある作品その1『空へ』

サンセットビーチにある作品その2『凪のとき赤いかたち/傾』

サンセットビーチにある作品その2『凪のとき赤いかたち/傾』

『せとだレモンとは?』

太陽と海からの風、瀬戸内の温暖な気候と島ならではの水はけの良い斜面、長年受け継がれてきた農家のレモンを作り出す技が合わさって「せとだレモン」が育てられたそうです。
「せとだレモン」は、「安全で安心な農産物」を多くのお客さまへ提供するために、安全安心レモンの栽培に取組んでいます。
その証は、広島県が認証した特別栽培農産物レモン「せとだエコレモン」となります。
「せとだエコレモン」は、農薬や化学肥料の使用が制限されています。
そして、こまめな圃場巡回や病害虫の発生状況、樹の状況の見極めも欠かせないそうです。
特に肥料は、有機肥料を使用し、レモンが元気に育つための土づくりを心掛けているそうです。
また、「せとだエコレモン」は、ノーワックスで、防カビ剤を使用しないため、「皮まで食べられるレモン」として、自信をもってお客さまに提供できるレモンです。

『せとだエコレモン』の箱

『せとだエコレモン』の箱

『せとだエコレモン』を使用した商品

『せとだエコレモン』を使用した商品

『せとだレモンとの出会いと想い』

原田さんに、『せとだレモンとの出会い』についてお話を聞いてみました。
原田さんがレモン栽培を始めた1978年頃、家には5本から10本ほどのレモンの樹から栽培を始めたそうです。
「せとだレモン」が国産レモン発祥の地といわれるまでの道のりは、簡単なことではなかったそうです。
1963年、「レモン谷」と呼ばれている垂水地区の一帯を中心に、レモンブームが巻き起こり、生産量約900トンを誇る日本一のレモン産地となりました。
しかし、1964年の輸入レモン自由化により、国産レモンは壊滅的な打撃を受け、生産者は、レモンの伐採を余儀なくされたそうです。
それでも、輸入レモンにはない、付加価値を見出し、「皮まで食べられるエコレモン」として、2003年には、第8回環境保全型農業推進コンクールで優秀賞を受賞し、2008年には、広島県特別栽培農産物に認定されました。
原田さんのレモン栽培に対する想いは、安全、安心な栽培管理のもと、安全で豊かな生活が送れるようにと願いを込めて、自信を持ってお客さまにお届けすることです。
今年で、レモン栽培42年目を迎える原田さんは、今では1,500本以上のレモンの樹を栽培する生産者です。

『皮まで食べられるエコレモン』

『皮まで食べられるエコレモン』

瀬戸内の海を背景にした原田さんとレモンの樹

瀬戸内の海を背景にした原田さんとレモンの樹

『せとだレモンの栽培方法』

次に、『レモンの栽培方法』についてお話を聞いてみました。
レモンの生育は、5月に「レモンの花」が咲きはじめ、6月ごろから「レモンの実」がなりはじめます。
そして、10月下旬ごろには収穫をむかえ、「手摘み」での収穫作業が翌年4月頃まで続きます。
レモンを育てるのに欠かせないことは、レモンの樹と圃場の「健康管理」だそうです。
レモンは、実がなり始めてから、収穫にむけて一気に生長期に入ります。圃場は、レモンの生長と同時に、雑草も生長しやすく、こまめに雑草を処理しないと、レモンの実に栄養がいきわたらなくなり、生育不足となってしまうそうです。
また、レモンの実に傷が付かないように配慮することも重要です。なぜならば、強い風で樹が揺れ、レモンの実に傷がつき、「かいよう病」(実に茶色い斑点ができる)と呼ばれる病気になり、出荷ができなくなってしまうからです。
原田さん曰く、「夏から秋の台風シーズンは、特に注意が必要で、1本1本、レモンの樹に目を配り、管理を強化しなければ、すべてのレモンが出荷できなくなってしまいます。」と、話してくれました。

レモンの花のつぼみ

レモンの花のつぼみ

レモンの花

レモンの花

『せとだレモンの収穫』

次に、『せとだレモンの収穫』についてお話を聞いてみました。
「せとだレモン」は、露地栽培、施設栽培、貯蔵により、周年供給できる体制を整えています。
10月から12月のレモンは、グリーンレモンで、香りがとてもいいのが特徴です。1月から5月のレモンは、イエローレモンで、果汁がたっぷりなのが特徴です。
露地栽培レモンは、5月中旬に花が咲き、実をつけ生長します。収穫時期は10月から翌年4月までです。ある程度の大きさになると果汁が出始め収穫時期となります。
早摘みのレモンは、グリーンレモンといわれ、さわやかな香りと酸味が楽しめます。グリーンレモンは、そのまま樹に実らせていれば黄色くなります。
グリーンレモンからイエローレモンになるにつれて、香りは落ち着き、果汁が増え、熟してくると甘さも増し、糖度と酸味の両方を味わうことができます。
収穫は、一度に収穫はしません。なぜならば、レモンは、酸味が強く、傷みにくい性質があるものの、「せとだレモン」は、防腐剤、ワックスを使用しないため、「新鮮な状態」を維持する期間が短く、そのため、出荷の直前まで収穫しないことで、新鮮さを確保するからです。

グリーンレモン

グリーンレモン

イエローレモン

イエローレモン

『せとだレモンの取組み』

次に、『せとだレモンの取組み』についてお話を聞いてみました。
安全な国産レモンを栽培するため、農薬、化学肥料を通常よりも減らして栽培したレモンを2001年から「エコレモン」として販売を開始しました。
「エコレモン」は、環境に優しく、安全、安心な栽培管理の実践を理念として、人々が安全で豊かな暮らしが送れるようにと願いを込めて命名されました。
2003年には、環境に配慮した農業が評価され、「第8回環境保全型農業推進コンクール」で優秀賞を受賞し、2008年に安全、安心の証明として、化学合成農薬、化学合成肥料を通常の半分以下に抑えて栽培した農産物として、「安心!広島ブランド」広島県特別栽培農産物の認証を取得しました。
その証が、安全、安心を基本とした「皮まで食べられるエコレモン栽培」の取組みです。

『せとだエコレモン』の選果風景

『せとだエコレモン』の選果風景

特別栽培農産物の認証圃場

特別栽培農産物の認証圃場

『周年供給の取組み』

次に、『周年供給の取組み』についてお話を聞いてみました。
「せとだレモン」は、温室栽培(ハウス)を取り入れることで、国産レモンの端境期である夏場(7月下旬~9月)に、レモンを出荷することができます。
また、貯蔵レモンは、露地栽培で栽培されたレモンの鮮度を保持するために、フィルム(P-プラス:酸素の透過量を調整し、青果物の呼吸を低くすることで、劣化を遅らせるフィルム)を使用し、1個ずつ包装することで長期間の保存が可能となり、夏場の端境期と同様に、6月から8月上旬も出荷することができるそうです。
もちろん鮮度を保持するには、「枯枝の除去(剪定)」、「梢の処理」、「摘果作業」など、こまめな管理が必要不可欠であるとのことです。

モススタッフに『せとだレモンの鮮度』を説明する原田さん

モススタッフに『せとだレモンの鮮度』を説明する原田さん

枯枝の除去(剪定)をする原田さん

枯枝の除去(剪定)をする原田さん

梢の処理をする原田さん

梢の処理をする原田さん

摘果作業をする原田さん

摘果作業をする原田さん

『型枠レモン』

「せとだレモン」は、型枠を使用した独自の栽培に取組んでいます。
『型枠レモン』作りは、JA三原のせとだ支店管内の生産農家さんが、20年ほど前から取組んでいます。
また、5年前には、新たな型枠を開発し、より形が美しい「ハート形レモン」の栽培に成功しました。
JA三原さんでは、約3万個の型枠を生産農家さんに貸し出しています。収穫された『型枠レモン』は、東京、大阪、広島の市場などで販売されています。
『型枠レモン』の収穫は、12月から3月が収穫の時期だそうです。

栽培中の『ハート形レモン』

栽培中の『ハート形レモン』

黄色く色付いた『ハート形レモン』

黄色く色付いた『ハート形レモン』

原田さんからのメッセージ

原田さんにモスバーガーのお客さまに向けてひとこといただきました。
「瀬戸田町は、年間平均温度15.5度と、瀬戸内ならではの温暖な気候であり、年間の降水量も少なく、レモンなどの柑橘栽培に恵まれた環境です。その恵まれた環境で育てた『せとだレモン』は、栽培方法にもこだわり、まろやかで、コクがあり、食べやすいレモンで、皮まで食べられる安心なレモンです。まるごと食べるにはピッタリですよ!!」
9月17日(木)より販売を開始している『まるごと!レモンのジンジャーエール withふじりんごソース』で使用されています。ぜひ、モスバーガーの店舗でご賞味ください!!
*時期、地域によっては、「せとだレモン」以外のレモンを使用する場合がありますのでご了承ください。

原田 悟さん

原田 悟さん

Text by Osako