産地だより 2019年9月

タスパス出荷組合(山梨) 小清水 元一さん、元彦さん

2019年9月
山梨県北杜市 タスパス出荷組合(山梨)(キャベツ)
小清水 元一さん、元彦さん

今月の産地だよりは、7月から10月にかけて、西日本のモスバーガーを中心にキャベツをご供給いただいている、タスパス出荷組合(山梨)の小清水 元一さん、元彦さん親子のご紹介させていただきます。同組合は、長野県に本拠地を置く肥料、農産物販売を行う丸西産業さんが運営する組合です。本業が肥料屋さんだけに、そこには確かな栽培技術に裏付けされた野菜作りの秘密がありました。

北杜市はどこ?

北杜市は、2004年に北巨摩郡7町村(明野村、須玉町、高根町、長坂町、大泉村、白州町、武川町)が合併して誕生した市です。…とは言っても、全国的には正直どこ?という声も多いでしょう。北杜市で一番有名な観光地といえば、そうです!「清里」です。
バブルの時に軽井沢と並んで一世を風靡した人気の避暑地です。バブル絶頂期の1980年台半ばには、ペンションやタレントショップが乱立し、年間250万人の観光客が訪れたという記録もあります。今回取材で訪れた小清水さんの畑は、清里のある旧高根町にあります。バブルの波は遠い昔に過ぎ去り、今では閑静な品のいい避暑地。という印象です。
そんな観光地の清里エリアですが、大通りを少し入るとキャベツ、レタスなどの高原野菜の産地でもあるのです。

北杜市(清里)に到着

北杜市(清里)に到着

おすすめスポットその1 萌木の村

おすすめスポットその1 萌木の村

清里エリアをリサーチ

まずは、清里エリアの情報収集を兼ねて、地元情報筋の紹介で「萌木の村」と「ソフトクリームのマミィ」に行ってみました。萌木の村は清里の観光定番スポットです。森の中の広大な敷地に、とってもお洒落なレストランやカフェ、ホテル、クラフトショップなどが点在しています。
そして、居並ぶソフトクリーム屋さんを押しのけて、地元の方一押しのソフトクリーム屋さんマミィ。
「お勧めはなんですか?(…まぁ、どうせバニラでしょ?)」(モススタッフ)
「チーズソフトです。(迷わず!)」(お店の方)
なにぃ!チーズですか!!この返しは人生初体験です。迷わずにチーズソフトを選択。
小さなチーズのツブツブがソフトクリームの中に練り込まれていて、さわやかな甘み、酸味、そしてコク。これは癖になる一品です。清里にお越しの際はぜひお立ち寄りください!

おすすめスポットその2 ソフトクリーム屋さんマミィ

おすすめスポットその2
ソフトクリーム屋さんマミィ

おすすめはチーズソフトです。

おすすめはチーズソフトです。

タスパス出荷組合(山梨)に到着

モスのスタッフが訪問したのは8月のお盆前。帰省ラッシュの渋滞にはまってしまい、通常であれば都内から3時間弱で着く予定が、5時間も掛かってしまい、ヘトヘトになりながら到着しました。
モスにキャベツを出荷し始めて7年になる、小清水 元一さん(71歳)、元彦さん(40歳)親子にお出迎えいただきました。
「いや~暑いですね~。暑い中遠くから有難うございます。」(元一さん)
「いやいや、東京と比べると十分涼しいですよ!」(モススタッフ)
「そうかい、ここに住んでると暑いとしか思わないけどね~。でもこの高冷地の寒暖の差がおいしい野菜を作るんだよね。」(元一さん)
元一さんは今年で71歳、農業歴は50年とのことで、さぞかしベテランのキャベツ農家さんなのだろうなと思って話を聞いてみると、キャベツの経験が実はまだ7年目とのこと。
もともと丸西産業さんと肥料でのお付き合いがあり、準高冷地での生産強化を図りたかった丸西さんが小清水さんにお声がけして、キャベツの契約栽培を始めたそうです。

タスパス出荷組合山梨の事務所に到着

タスパス出荷組合山梨の事務所に到着

取材を受ける小清水さん親子

取材を受ける小清水さん親子

キャベツ栽培未経験からのスタート

「それまでは大根を栽培していたんだけど、大根は畑から収穫してから洗浄して箱詰めをしなくちゃならない。人手不足もあって白菜に栽培品目を変えました。当時、白菜は市場に出荷していましたが、価格の乱高下が激しくて経営が安定しなかったですね。」(元一さん)
市場出荷をしていた頃は、価格が安くて、出荷して経費を引くと赤字になる場合も度々ありました。そんな時は、トラクターで畑をつぶさざる得ないこともあったといいます。
「野菜をうなう※時には涙も出ないね。悔しい思いを何度もしましたね。」(元一さん)
(※トラクター等で野菜を潰して、畑にすき込むこと)
そんな時に、丸西さんから契約栽培でキャベツを作らないか?とのお誘いをいただいたそうです。キャベツを作った経験がなかった小清水さんですが、丸西さんから土壌分析をしてもらったり、技術者を派遣してキャベツの栽培指導をしてもらう等のサポートもあって、年々、栽培技術を上げていったそうです。

小清水さんのキャベツ畑(後方は八ヶ岳)

小清水さんのキャベツ畑(後方は八ヶ岳)

大きく育ったキャベツ

大きく育ったキャベツ

次世代を担う、元彦さん

息子の元彦さんが本格的に農業の道に入ったのは5年前のことだそうです。
「当初は、父の農業を継ごうとは思わなかったですね。事務職や運送業などいろいろな所で仕事をしてきました。」(元彦さん)
「農業をやろうとの転機になったことはありますか?」(モススタッフ)
「自分でやった仕事の結果がはっきりと見える仕事がしたいと思ったんですよ。
それが農業だと思いました。」(元彦さん)
「ご苦労はありましたか?」(モススタッフ)
「それまでも、収穫を朝手伝うなどはしていましたが、土づくりから、肥料撒き、苗作り、定植、防除、収穫、出荷、畑の片づけ、という一連の流れで経験することは初めてでした。改めて、父はすごい仕事をやっていたんだなと実感しました。」(元彦さん)
小清水農場では、現在、キャベツ7ha、リーフレタス2.5haの面積を、朝は収穫はアルバイトさんがいますが、日中の管理は4名で行っています。
「これからの計画として、私ももういい年なので、農機に乗る仕事であったり、農場管理全体を見れる人材を急いで育成しなくてはいけないと考えています。」(元一さん)
元一さんの目は、次世代の農業者の育成に向いていました。

獣害対策の電気柵

獣害対策の電気柵

元彦さんとご自慢のジョンディアのトラクター

元彦さんとご自慢のジョンディアのトラクター

キャベツ作りの栽培技術

キャベツ作りの外せないこだわりを聞くと「土づくり」という答えが返ってきました。
「白菜を栽培しているとき、一度、未熟な堆肥を入れたしまったために、白菜の葉が黄色くなってしまい畑から全く収穫することが出来なかったという経験をしました。未熟堆肥の怖さをしりました。」(元一さん)
そうした経験から、現在は「クロノソイル」という堆肥と同じ保肥力を高める効果のある腐植成分をメインに入れて、土づくりを行っているそうです。
また、キャベツ(アブラナ科)などの野菜は、毎年同じ畑で同じ作物を作り続けると収穫量が減少していく連作障害が出やすいと言われています。特に、問題となるのがキャベツの根に取り付いて生育を阻害する根こぶ病菌です。
こうした病気に対しても、安易に薬剤に頼るのではなく、様々な工夫でいいキャベツを作る努力をされています。石灰質肥料を多めに入れて、土壌をアルカリ性に持って行くことで被害を軽減したり、「こぶ減り大根」という緑肥を利用して畑の中の菌密度を下げるなどの工夫をしています。
さらに、キャベツ作りには、品種選定、病害対策などの技術も欠かせません。
小清水農場のキャベツは、代表的な品種として春から、信州868→青琳(せいりん)→輝吉 (てるよし)という3つの品種を上手に組み合わせて、安定的な生産を維持しているとのことです。

取材するモススタッフ

取材するモススタッフ

1年間で50万個!

小清水さんがこだわって栽培したキャベツ畑には、シカやイノシシも現れて食害していくこともあるそうで、対策として、デンボク(電気柵)を設置しています。
「シカも覚えているらしくて、1回電気柵に触れて痛い思いをすると怖がって来なくなりますね。」(元彦さん)
「ところで、キャベツを1年で何玉収穫していますか?」(モススタッフ)
「え?!え~と、1日400箱で…」と計算を始めた元彦さん、その数、なんと約50万個のキャベツを収穫している計算になるそうです。
そんな忙しい夏の生活を送る小清水さん親子。冬くらいはゆっくり出来るんですよね?
「いや~、それが、本当に暇なのは1月だけ。2月からは種まきが始まり7月から10月いっぱいは収穫。年内は畑の片づけと土づくり。契約栽培に取り組むようになってから、長い期間安定的に出荷することを心掛けるようになってきたからね。ありがたいことに暇がなくなったね。(笑)」(元一さん)

小清水さん親子と栽培指導担当の中村さん

小清水さん親子と栽培指導担当の中村さん

モスバーガーへのメッセージ

小清水 元一さん
「モスバーガーの印象は、パンが他のバーガー屋さんと比べておいしいですよね。私はカレーが好きだから、カレーモスバーガーも食べましたよ。一生懸命、出来るだけおいしいキャベツを作りますので、ぜひ私たちのキャベツを味わいながら食べてください。」

小清水 元彦さん
「モスバーガーの印象は、おいしい!の一言ですね。一番好きなハンバーガーはもちろん、キャベツたっぷりのロースカツバーガーです。私にも小さな子供が3人いるのですが、自分で作ったキャベツを子供がおいしいと言って食べてくれるキャベツづくりを理想として頑張ります。」

Text by Sato