産地だより 2019年6月

岡本 和夫さん

2019年6月
和歌山県紀の川市 岡本 和夫(玉ねぎ)
代表生産者 岡本 和夫さん

今回の産地だよりは、和歌山県紀の川市で玉ねぎを栽培している協力農家さんの岡本 和夫さんをレポートします。

紀の川のご紹介

紀の川市は、和歌山県の北部に位置しています。北に和泉山脈、南に紀伊山地があり、この間を市名の由来である紀の川が貫流しています。
また、紀の川市は農業が盛んで、温暖な気候と紀の川がもたらす肥沃な土壌を最大限に利用して、野菜、果物など多種多様な農作物を生産しています。農業産出額全体では和歌山県内1位を誇り、トップブランド『あら川の桃』をはじめ、はっさく、いちじく、柿、キウイフルーツ、いちごなど四季折々の果物が収穫できる全国有数の果物産地です。

玉ねぎ栽培との出会い

岡本さんの玉ねぎとの出会いは、代々続く農家の家で育ったことがきっかけだそうです。
岡本さんは、圃場で働くお父さんの背中を見て、小学校5年生の頃から玉ねぎ栽培を手伝っていたそうです。
紀の川市は、野菜以外に果物の栽培が盛んで、岡本さんの家でも、『はっさく』、『みかん』、『清美オレンジ』、『デコポン』などの柑橘類を栽培していました。
ところが、岡本さんご自身が7年前のお正月に、自宅で倒れて頭を打ち、硬膜外出血となり、緊急入院することとなりました。
退院後、自身の身体を考慮し、柑橘類の栽培をやめて、玉ねぎと田んぼに専念することにしたそうです。
岡本さんは今年で65歳になります。何時うかがっても、岡本さん、奥さまともに明るく、誠心誠意、接してくれます。
その心遣いが、岡本さんが栽培する玉ねぎの味であることは、言うまでもありません。

産地だよりの取材

産地だよりの取材

岡本さんご夫妻

岡本さんご夫妻

『玉ねぎ栽培』のこだわり

岡本さんに、『玉ねぎ栽培』のこだわりについてお話を聞いてみました。
岡本さんの栽培方法は、畝を高くすることから始まります。圃場で使用できる土の量は決まっているので、以前は、幅90cmの畝作りをしていましたが、80cm畝高にしています。
なぜ畝高にするのか?それは、水はけをよくすることで、玉ねぎの生育を促進するためです。
ちなみに、水はけが悪いと、根が傷みやすく、葉の色が黄色くなってしまい、玉が細くなり、玉が肥大しないそうです。結果、収穫量が減ってしまうとのことです。
畝作りのあとは、岡本さん手作りの『穴をあける道具』で、玉ねぎの苗を植える穴をあけます。
穴あけ作業は、10cm間隔に9個の穴を開けます。1回の作業で、63個の穴を開けることができます。すべて手作業のため大変な作業となります。

手作りの『穴を開ける道具』

手作りの『穴を開ける道具』

穴を開ける部分

穴を開ける部分

『土作り』のこだわりその1

次に、『土作り』についてお話を聞いてみました。
岡本さんの『土作り』は、施肥肥料にあります。岡本さんは裏作(主たる作物の収穫後、次の作付けまでの期間を利用してほかの作物をつくること)でお米を栽培しています。
田んぼの稲刈り後の藁(圃場面積50%分の量)を土にすき込んでいます。以前は、100%圃場に『藁』をすき込んでいましたが、玉ねぎの生育が悪かったため、毎年『藁』の量を調整し、生育状況を確認した結果、現在の量になったそうです。
土壌の団粒化により、土がやわらかくなり、根の張りがよくなって、生育がよくなり、また、根にこぶを作る、根を腐らせる『センチュウ』の密度低減にも役立っているそうです。

使用する『藁』

使用する『藁』

生育状況を確認する岡本さん

生育状況を確認する岡本さん

『土作り』のこだわりその2

岡本さんは、『藁』以外にも、『ホタテの殻』も使用しています。
使用する『ホタテの殻』は、殻を焼き、砕いたもので、『カルシム』を補給することで、土壌を中性にして、生育を促進させています。
酸性の土に『カルシウム』と『マグネシウム』を補給することで酸性に傾いている土壌が改良され、『リン酸』の吸収率が上がり、また、葉緑素の量も増えるので、光合成がよくなり、生育が促進されるそうです。

地中深くまで根が張った玉ねぎ

地中深くまで根が張った玉ねぎ

生育状況をモススタッフに説明

生育状況をモススタッフに説明

『栽培品種』のこだわり

『栽培品種』のこだわりについて、岡本さんにお話を聞いてみました。
岡本さんは、出荷期間中3品種の玉ねぎを出荷します。それは、栽培時期に応じた品種で、『早生』(定植から収穫までの生育期間が短い。晩生と比べて背丈は低く、収穫量も少ない)、『中生』(早生と晩生の中間)、『晩生』(定植から収穫までの期間が長く、早生と比べて背丈は高くなり、収穫量も多い)となります。
現在は、この品種で固定されていますが、この品種に至るまでは、色々な品種を試し、何がいちばんこの土壌にあった品種なのかを試行錯誤した結果だそうです。
また、栽培する品種には味やその他の違いもあり、早生品種である『七宝』は、甘味が強く、中生品種である『アトン』は、甘味は少ないが、えぐ味がなく、瑞々しく、晩生品種『もみじ』は、貯蔵に適していて、長く出荷することができるそうです。

早生玉ねぎの圃場

早生玉ねぎの圃場

倒伏した早生玉ねぎ

倒伏した早生玉ねぎ

『玉ねぎの収穫』

次に、『玉ねぎの収穫・選果』について、お話を聞いてみました。
玉ねぎの苗を植えるのも手作業でしたが、収穫もすべて手作業です。
収穫方法は、最初に玉ねぎの『葉』を切ることから始まります。そして、マルチ(保温されることによる生育促進、雑草防止などに使用されるビニール、ポリエチレンなどのフィルム)を剥がします。
そして、玉ねぎの『根』切り作業に入ります。『根』切りした玉ねぎは、プラスティックのコンテナに移され、その後、集出荷場へ運ばれ選果します。
収穫した玉ねぎを集荷する運搬車は、1回で850kgの玉ねぎを集荷することができます。
また、運搬車のタイヤはキャタピラーで、地面との接触面が大きいので、悪路など、圃場内での集荷作業効率を上げています。

『葉』切りをした玉ねぎ

『葉』切りをした玉ねぎ

『根』切り作業

『根』切り作業

玉ねぎを集荷する運搬車

玉ねぎを集荷する運搬車

『玉ねぎの選果・乾燥・出荷』

次は、集荷後の玉ねぎを選果します。選果する道具も、岡本さんご自身が作ったものです。
サイズごとの円い穴を開けた板を使用して、その穴に玉ねぎを通して選果します。
選果した玉ねぎは、集出荷場に運び、10日から2週間ほど乾燥させます。乾燥は、『腐敗菌』を防止するためです。
重要なのは、収穫する時に、玉ねぎの『つる』を2cmから3cmほど切り残すことだそうです。乾燥させる時に、『つる』を残すことで、内部に『菌』を入りづらくさせているそうです。
内部に『菌』が入ってしまうと、『腐敗菌』により、傷んでしまい、日持ちしないとのことです。
乾燥後、玉ねぎは出荷されます。

手作りの『選果道具』

手作りの『選果道具』

選果作業

選果作業

玉ねぎを乾燥、貯蔵するハウス

玉ねぎを乾燥、貯蔵するハウス

玉ねぎの出荷

玉ねぎの出荷

岡本 和夫さんからのメッセージ

岡本 和夫さんにモスバーガーのお客さまに向けて一言いただきました。
「子供のころから父親の働く姿を見て、農業に興味を持ち、今に至ります。紀の川市は、柑橘類の栽培が盛んですが、私自身、柑橘類を栽培した経験があります。柑橘類は、糖度を無視することはできません。現在は、玉ねぎとお米の2品目のみの栽培ですが、柑橘類の栽培で得た経験と実績は、玉ねぎの甘さ、糖度アップに役立っています。
これからも、モスバーガーに合うおいしい玉ねぎを栽培しますので、よろしくお願いいたします。」
岡本 和夫さんが栽培した玉ねぎは、5月中旬から6月末ごろまで、関西、四国エリアに出荷されます。

岡本さんと従業員の皆さま

岡本さんと従業員の皆さま

Text by Osako