産地だより 2018年8月

長野県上田市菅平高原 中曽根農場(キャベツ、レタス) 農場長 飯塚 大介さん キャベツ班長 伊藤 大さん

2018年8月
長野県上田市菅平高原
中曽根農場(キャベツ、レタス)
農場長 飯塚 大介さん
キャベツ班長 伊藤 大さん

日本の農業従事者の平均年齢は、平成29年データで66.6歳となっています。農業者の高齢化、人手不足が年々深刻化する中で、今回の産地だよりは、次世代の農業を担う30代の元気な若者たちにスポットを当てました。

ゲレンデが野菜畑に?!

丘陵全体が美しい天然の芝生に覆われた菅平高原は、スイスの牧場地帯ダボスに似ていることから「日本のダボス」と呼ばれています。
冬はスキーリゾート、夏はラグビー、サッカー、陸上などのスポーツ合宿の聖地として知られる観光地ですが、意外にも、レタス、キャベツなどの高原野菜の生産がとても盛んな地域です。畑の広がる山の斜面をふと見上げると、なんと、リフトが!!
そうなのです。この畑は、冬はスキー場のゲレンデとして使われているのです。菅平では、夏は野菜農家、冬場は、旅館業や、スキーのインストラクターなどに従事する農家さんが多いのも特徴です。

菅平高原の風景

菅平高原の風景

ゲレンデで野菜を栽培

ゲレンデで野菜を栽培

中曽根農場のご紹介

中曽根農場は、約50ha(東京ドーム約11個分)の広大な畑で約50名ものスタッフの方々が働く大きな農場です。「おいしい野菜を食べていただきたい」という思いから、牛糞にアミノ酵素を加えて1年間発酵させた自家製堆肥での土づくりに力をいれています。
安全安心の野菜作りを目指し、一般的な農家さんが使用する除草剤は一切使用せず、全て手作業により草取りを行っています。畑があるのは1,300m~1,500mの高冷地。その標高差を活かした栽培で、7月から10月にかけて、関東甲信越、九州などのモスのお店にキャベツ、レタスなどを出荷しています。

中曽根農場の本部

中曽根農場の本部

自家製の堆肥

自家製の堆肥

キャベツ班長 伊藤さんのご紹介

伊藤大さんは現在32歳。地元、菅平のご出身、学生時代はボクシング部に所属していたというスポーツマンです。
「学校を出てからしばらくはサービス業をしていたのですが、何だか窮屈というか自分の性格に合わなかったんですね。それで、菅平に帰ってきて仕事を探して、地元の方も沢山働いているということで何気なく中曽根農場で働き始めたら、こんなに楽しい仕事があるのか!とはまってしまいました。今までは、屋内での仕事ばかりだったので、屋根のないところでの仕事がすごく開放的で楽しかったんですよ。自分の性格にぴったり合ったんですね。」と伊藤さんは言います。

二足のわらじ

菅平では、冬場は雪が多く積もるので、当然、農業は出来ません。ここ、菅平で農業に従事する方々の多くが、冬には別の職業を持たれている方が多いです。
伊藤さんも、冬はスキー場で、レンタルスキーやリフト管理の仕事をしているそうです。
「冬と夏の仕事、どちらが好きかというと、悩みますが、どちらかというと、夏の農業の仕事の方が好きですかね。実は、寒いのが苦手なんですよ。」
現在の伊藤さんは、キャベツの種まきから、苗づくり、収穫、出荷、ビニールマルチを張る仕事など会社から幅広い仕事を任せられています。ご自身が、種まきから収穫までのすべての過程に関わって作物を作りあげて行くことに、ともて充実感を感じているそうです。

キャベツ班長の伊藤さん

キャベツ班長の伊藤さん

収穫間近のキャベツ畑

収穫間近のキャベツ畑

伊藤さんからのメッセージ

私も、まったくの素人から農業の仕事に飛び込んで、ここまでやってきました。
農業に興味のある若い子がいたら、ぜひ菅平に来て一緒に農業をやろうと言いたいですね。自分で一から作りあげたキャベツは、自分で食べても本当においしいなと思います。ぜひモスのお店に来ていただいて、たくさん食べてもらいたいですね。お気づきの点があれば、どんどんお客さまからメッセージをいただきたいです。

キャベツの生育状況を確認中

キャベツの生育状況を確認中

品種名は「信州868」

品種名は「信州868」

農場長 飯塚さんのご紹介

飯塚大介さんは、現在38歳。中曽根農場の社長である、中曽根信義さんの孫に当たる方です。農業に携わるきっかけは、今から20数年前、高校時代にアルバイトで祖父の農場で働き始めたことだそうです。
「僕がアルバイトを始めた頃は、中曽根農場で栽培している野菜の9割方は白菜を栽培していました。当時は、白菜が重い!とにかく重い!という思い出しかないですね。(笑)」
高校3年間、アルバイトをしたことにより、農業への魅力を感じて、卒業後は、祖父の農場にすぐに就職することを決めたそうです。

農場長の飯塚さん

農場長の飯塚さん

斜面に作られたレタス畑

斜面に作られたレタス畑

異常気象との闘い

訪問した7月下旬、高冷地で涼しいはずの菅平でも、今年は連日30℃前後の高温で、さらに、2週間近くまとまった雨が降っていないという異常気象に悩まされていました。
「この異常気象にはどう手を打てばいいのか悩みます。暑すぎてレタスが結球しないんですよ。トラクターで水を撒くことも出来ますが、畑が広すぎて、まさに焼け石に水です。」と飯塚さんは言います。近年の激変する気象の影響を一番受けやすい産業が、農業と言えるかも知れません。
去年までは、冬場はスキー場で仕事をしていた飯塚さんですが、今年からは、冬も農作業一本に絞って取り組んでいます。
「雪の上に炭を撒くと、雪融けが早まって、早く苗の植え付けが出来るんですよ。早めに植えたい畑に炭を撒いておくと、雪融けの速さがまったく違います。」これは、冬の仕事のひとつだそうです。
不安定な気候だからこそ、少しでも早く植え付けが出来るようにと、飯塚さんも様々な工夫で経営の安定化に取り組んでいます。

高温干ばつで巻いていないレタス

高温干ばつで巻いていないレタス

標高1,300mのレタス

標高1,300mのレタス

飯塚さんからのメッセージ

社長(祖父)は、あと数年で引退を考えているみたいなので、後を継ぐものとして、覚悟を決めて、全力で農業に取り組みたいですね。
精魂込めて作った野菜ですので、ぜひ皆さんにたくさん食べていただきたいです。

Text by Sato