産地だより 2018年2月

2018年2月
沖縄県豊見城(とみぐすく)市
JAおきなわ豊見城支店 トマト共選部会
部会長 長嶺 達也さん

今回の産地だよりは、1997年以来、モスの沖縄、関東地区のお店にトマトを継続して供給していただいている協力産地、JAおきなわ豊見城支店トマト共選部会の長嶺達也さんをレポートします。

JAおきなわ豊見城支店 トマト共選部会へ

豊見城支店は那覇空港から車で約30分、沖縄本島南部に位置し、土壌は保水性に富んでいるため、昔から農業が盛んな地域で、近年ではビニールハウス栽培などを中心に都市近郊型の農業が行われ、トマト、マンゴーなどが栽培されています。

豊見城市へ向かう車窓から

豊見城市へ向かう車窓から

豊見城市饒波地区のハウス群

豊見城市饒波地区のハウス群

豊見城市饒波(のは)地区の琉球石灰岩の上に立つ、トマトハウスに到着しました。
ハウスでは、代表生産者の長嶺達也さんとJA職員の長嶺咲希さんのW長嶺さんが待ってくれていました。ちなみにご夫婦ではございません。

琉球石灰岩壁の上に立つハウス

琉球石灰岩壁の上に立つハウス

長嶺咲希さんと長嶺達也さん

長嶺咲希さんと長嶺達也さん

長嶺達也さんは現在57歳。主に冬はトマト(定植9月中旬、収穫11月中旬~6月まで)、夏はマンゴーを栽培しています。この地域の代々の農家育ちで、継ぐのは当たり前で就農に迷いはなかったと言います。
現在は、この地域の生産者約100名の代表(部会長)を務めています。
今期の組合の目標をお聞きすると、「他の産地に味で負けないこと」「反収(面積当たりの収穫量)を上げること」と笑顔で力強く答えてくれました。
そして長嶺咲希さん。現在JAおきなわ豊見城支店トマト栽培指導員をされており、トマト栽培に関する地域内外の病害、害虫の状況を把握、新しい栽培技術の情報提供などを行い、かつ各生産者さんの高い技術と経験を最大限活かすことを心掛けてアドバイザーとして活躍されています。
ここで作られたトマトは、「ちゅらとまと」(沖縄の方言で、ちゅら=美しい、きれいの意味)というブランド名で、沖縄県内を中心に関東にも出荷をされています。

達也さんのトマトハウス内

達也さんのトマトハウス内

達也さんのマンゴーハウス内

達也さんのマンゴーハウス内

「ちゅらとまと」栽培の特徴

「このトマトは、9月後半に苗を植えました。豊見城ではトマトの品種は、『桃太郎ピース』6割、『りんか409』3割を採用しています。また誘引方法としては、Uターン栽培という方式を取っています」と達也さんが説明してくれました。
そのUターン栽培とは、真上に伸ばしたトマトの茎を地上から支柱の頂点(約180センチ)の高さにあるパイプにかけたあと、果実の重さで茎をUターン(逆U字型)させ、自然に成長点を降ろす栽培方法とのことです。
よくあるトマト栽培方法の「つる下げ栽培」では、茎の誘引やわき芽かきの作業負担が多くなるそうですが、茎を高く誘引しないことで誘引作業、芽かき、収穫段が目の高さにあることで作業の時間短縮ができるそうです。さらに沖縄ならではのメリットがあります。栽培期間中は15段から18段ぐらいまでトマトを収穫するそうですが、収穫後半の3月後半には、沖縄では陽射しが強くなり、陽に当たりすぎるとトマトが焼ける(実が固くなったり、色が黄色になったりする)現象がおきるそうです。その現象を軽減(葉が日傘の代わりになり、直射日光を遮ること)できるのがUターン栽培とのことです。

Uターン栽培の茎

Uターン栽培の茎

モスの社員へ説明する達也さん

モスの社員へ説明する達也さん

他にも沖縄ならではの栽培の特徴をお聞きすると「台風時がとても心配です。普段はハウスの開閉に気を遣いますが、台風のときは換気をしたくても開けられないなど、生育管理が難しくなります。また、沖縄ならではの栽培の特徴は、温暖な気候により、無加温で栽培していることです。暖房器具を使わず、自然的でエコな栽培となっています」と話してくれました。
「あとは、トマト栽培において大事なことは『芽かき』と『摘果』の作業です。生長が早いときは、どうしても間に合わないことがあります。この作業が追いつかないと実が大きくならなかったり、樹勢が弱くなったりします」とも話してくれました。

肥沃な土壌を活かした栽培

JA長嶺さんが沖縄の土壌について説明してくれました。
「沖縄南部に多く見られるジャーガルという土壌があります。その中でも豊見城は『クチャ』という土壌を多く含み、他府県の土壌と異なる土質です。沖縄の土壌は、古代に大陸から堆積した土壌や珊瑚でできた琉球石灰岩の風化などで出来たミネラル分たっぷりの土壌と言われています。しかし、粘土質で硬く固まりやすいため、そのままでは使いにくい土壌です。そのため、栽培前に堆肥をいれるなど、土づくりが重要となります」と話してくれました。さらに「昔はこのミネラルが多く含むと言われる『クチャ』で髪の毛も洗っていたそうです」とも教えてくれました。
達也さんのトマトは、肥沃な土壌を最大限活かし、自根苗を使用しています。その他栽培の工夫でもトマトの力を引き出すなど、他の産地に味で負けないことを目指してトマトを栽培していることを、お話を聞いてさらに強く感じました。

クチャ土壌

クチャ土壌

クチャのかたまり

クチャのかたまり

今年のトマトの状況は

「今年は10月の台風の影響で、生育が遅れ、花とび(花が咲かず実がつかない)があり、一時は収穫が遅れ気味でしたが、今は順調に収穫でき、味にも満足しています」と達也さん。

収穫間近の実

収穫間近の実

1ヵ月後に収穫予定の実

1ヵ月後に収穫予定の実

JAおきなわ豊見城支店 選果場へ

トマトハウスをあとにして、選果場を見せていただきました。
約100名の生産者さんが収穫したトマトは、こちらの施設に集荷され、センサーにより、サイズと重さを測り、仕分けし出荷されます。
モスバーガーには沖縄県内と関東に出荷しています。
また、JAおきなわ豊見城支店トマト共選部会では、毎年「モスの産直フェスタ」※にご協力もいただいています。2018年の沖縄産直フェスタは2月10日~12日開催。

※「モスの産直野菜フェスタ」では、店長や店舗スタッフがキャンペーン期間の初日もしくは前日に、近隣のモスの協力農家で自ら野菜を収穫します。
収穫された「モスの生野菜」は、産地から物流拠点などを介さず店舗へ直接運ばれ、ハンバーガーなどに使用されます。

トマト選果場

トマト選果場

センサー選果機で分別

センサー選果機で分別

出荷される「ちゅらとまと」

出荷される「ちゅらとまと」

モスの店長へ説明するJA長嶺さん

モスの店長へ説明するJA長嶺さん

JAおきなわ豊見城支店からのメッセージ

沖縄の肥沃な土壌と冬場でも暖房を焚かなくてもよい温暖な気候を活かし、自然と共に一生懸命作りました「ちゅらとまと」です。ぜひ名前も覚えていただき、食べてみてください。

Text by Iigusa