産地だより 2018年1月

2018年1月
広島県大崎上島町
亀田農園(トマト)
代表生産者 亀田 英壮さん

今回の産地だよりは、2017年2月号でレポートした広島県大崎上島町でトマトを栽培している協力農家さんの亀田農園さんをさらに詳しくご紹介します。
大崎上島町は、竹原、安芸津からのフェリーで約30分の芸予諸島の中程に位置します。
気候は温暖で、降雪も少なく、柑橘類の栽培に適した環境で、みかん、レモン、ブルーベリーの栽培に力を注いでいます。
また、造船業が盛んで、島内浦々に造船所があります。
それでは、瀬戸内海に浮かぶ芸予諸島の大崎上島町で、トマトを栽培している亀田農園さんのレポートを開始します。

産業としての農業とは?

まず初めに、亀田農園さんのトマト栽培に携わったきっかけについて、代表生産者である亀田社長にお話を聞いてみました。
亀田社長曰く、「産業としての農業を作りたい」と語ってくれました。
兼業農家であった祖父母のもと、1970年に専業農家として父親がみかん栽培を始めました。
しかし、2年後の1972年、みかん(柑橘)が大暴落し、どん底を経験したそうです。
どん底の中で、1975年頃から組合マーケット(JAの直売所)への出荷が始まりました。
それでも、みかん販売は伸び悩み、県の普及所に相談したところ、「島の立地を活かして、トマトを栽培したらどうか?」という一言がきっかけとなり、8戸の農家でトマト部会を立ち上げ、トマト栽培を始めました。
亀田社長自身は、子どもの頃から父親の背中を見て育ったので、小学生の頃は、純粋に「農家になりたい!」と、思っていたそうです。
やがて、中学生、高校生となり、農業への道に進むことに迷いもありましたが、農業系の大学に進学することを決心しました。
そして、大学時代に農業が【業】として確立しないことを実感し、産業としての農業を確立したいと思ったそうです。
この思い、理念が、亀田農園さんの礎であり、亀ちゃんトマトが誕生したきっかけであると感じました。

亀ちゃんトマト

亀ちゃんトマト

大切にしている2つのこととは?

亀田農園さんでは、「大切にしている2つのこと」があるそうです。
1つは、「亀田農園のトマトを扱ってくれるお客さまから信用されること」、もうひとつは、「会社組織にしてから、【業】として成り立つまで、苦労をかけているけど頑張ってやってくれている従業員への感謝の気持ちを大切にすること」です。
そして、大切にしている2つのことは、規模を拡大するために必要不可欠な人材育成に、貢献しているそうです。
亀田農園さんの選果場には、大切にしている2つのこと以外に、「亀田農園株式会社理念」が掲示されています。
栽培への思い、お客さまへの思い、地域貢献、そして、従業員へ対する愛情が伝わってきます。選果場に掲示されている「亀田農園株式会社理念」は、亀田社長のお父さまの直筆で書かれています。

亀田農園株式会社理念

亀田農園株式会社理念

亀ちゃん農園のトレードマーク入りの看板

亀ちゃん農園のトレードマーク入りの看板

栽培のこだわり(自根苗)

次に、トマトの特徴についてお話を聞いてみました。
自根苗(種をまいて出てきた苗)で栽培する方法とは別に、接木苗(耐病性に強い苗と病気に弱い苗を継ぎ足し、病気に強くなる苗)で栽培する方法がありますが、亀田農園さんのトマトは、自根苗で栽培されています。
自根苗は、土壌が細菌やウイルス、塩害に犯されていると、トマトを育てることができないそうです。
亀田農園さんは、自根苗を使用し、栽培の工夫でトマトの力を引き出し、通常のトマトより糖度の高いトマトを栽培しています。
ちなみに、亀ちゃんトマトは3種類あり、昔懐かしいトマトを連想してもらう意味で、「想いでトマト」、「亀ちゃんトマト味特」、「匠二代」の商品名があり、品種は、すべて「桃太郎J」を使用しています。

10月のトマトの苗

10月のトマトの苗

12月のトマトの苗

12月のトマトの苗

トマトの生育状況を説明する亀田社長

トマトの生育状況を説明する亀田社長

栽培のこだわり(土づくり)

自根苗のお話を聞きましたが、自根苗が育つ環境づくりに不可欠な「土づくり」についてお話を聞いてみました。
亀田社長は、父子二代で30年間トマトを栽培しています。土づくりにこだわり、作物を健全に管理できるノウハウで、連作障害(同じ土地で同じ作物を繰り返し作り続けることで起きる生育不良)は、30年間1度もないとのことです。
その秘訣を聞いてみると、トマトの栽培前に河川敷で「ヨシ」(イネ科ヨシ属の多年草。河川、湖沼の水際に背の高い群落を形成)を集め、ハウス内に敷くそうです。その量は、ハウスの面積分であり、毎年、亀田社長自ら集め、トラックの荷台に詰め込み運んでくるそうです。
「ヨシ」を見せてもらうと、中心に「空洞」がありました。その空洞が酸素の通り道となり、土の中に酸素を作ることで、よい菌を増やし、土の地力強化となり、30年間1度も連作障害がないとのことです。
また、「ヨシ」をハウス内の通路に敷き詰めることで、作業中に従業員が踏んでも土が硬くならず、クッションの役割となり、トマトの根がしっかりと張り、水分も乾きづらく、茎を安定させることで、根から必要な水分を吸収して、茎や葉へ送りやすくしているそうです。

土の状態を確認する亀田社長

土の状態を確認する亀田社長

「ヨシ」の役割を説明する亀田社長

「ヨシ」の役割を説明する亀田社長

栽培のこだわり(芽かき)

次に、「芽かき」作業についてお話を聞いてみました。
「芽かき」は、わき芽をそのまま放置すると、わき芽が伸びることにより養分を使ってしまい、トマトの実が十分に育たなくなってしまうそうです。
また、わき芽を放っておくと、葉が茂り、風通しが悪くなり、病害虫の原因となったり、トマトの実つきが悪くなったりするそうです。
「芽かき」は、トマト栽培にはとても大切で、トマトの樹を生長させるために必要不可欠な作業なので、一本一本の樹のわき芽を手作業で摘み取る大変な作業です。

「芽かき」作業を説明する亀田社長

「芽かき」作業を説明する亀田社長

「芽かき」作業の風景

「芽かき」作業の風景

栽培のこだわり(摘果)

「芽かき」作業の次は、「摘果」作業についてお話を聞いてみました。
「摘果」作業の重要性は、実をつけた果樹の未成熟の実を摘み取る作業です。実がまだ小さいうちに、生育の悪い実や増えすぎた実を摘み取って、残した実に栄養を十分に与え、樹への負担を減らし、結果、実の大きさを揃えやすくするそうです。
亀田農園さんは、一房5個から6個のトマトの実を4個にしています。その作業により、モスバーガーの店舗で使用するトマトの大きさに育てられるそうです。

「摘果」作業を説明する亀田社長

「摘果」作業を説明する亀田社長

栽培のこだわり(誘引)

最後に、「誘引」についてお話を聞いてみました。
亀田農園さんでは、ハウスの骨組みであるパイプの口径に合わせた、2つの「誘引」方式を取り入れています。
2つの「誘引」方式は、ハウスの骨組みであるパイプの口径により、「誘引」方式を変えています。
口径の大きいパイプを使用したハウスでは、「Uターン方式」を取り入れています。
「Uターン方式」は、トマトの樹をパイプに引っ掛けてUターンさせます。パイプに負荷がかかるので、口径の大きいパイプを使用したハウスで取り入れています。
「ずらし方式」は、トマトの樹を斜めにずらす方式であり、パイプに負荷がかからないため、口径の小さいパイプを使用したハウスで取り入れています。
トマトの樹は、どんどん上に伸びていきます。背が高くなりすぎると収穫の際、トマトに手が届かなくなるので、作業効率を考えた方式であるそうです。
また、「誘引」は、作業効率のみならず、生長(樹の先端である生長点は、太陽に向いている)の向きや、樹のバランスがよくなるので、元気に生長するそうです。

「誘引」作業の風景その1

「誘引」作業の風景その1

「誘引」作業の風景その2

「誘引」作業の風景その2

亀田農園さんからのメッセージ

亀田農園さんにモスバーガーのお客さまに向けて一言いただきました。
「安全で豊かな食材をお客さまにお届けすること。農業振興と地域の活性化に寄与し、豊かな生活と明るい家庭を築くことで、心、生産心で販売すべて感謝の心をもつことが、亀田農園の理念です。
また、大切にしている2つのことでもお話ししましたが、トマトを扱ってくれるお客さまからの信用と、一緒に頑張ってやってくれている従業員への感謝の気持ちを忘れずに、日々、トマト栽培に邁進しています。」
瀬戸内海の太陽(愛情)いっぱいで育てられたトマトと、一緒に働く従業員さんの愛情がいっぱいにつまった亀田農園さんのトマトをぜひ、モスバーガーのお店でお召しあがりください!!

亀田農園の皆さん

亀田農園の皆さん

Text by Osako