長崎県南島原市 ながさき南部生産組合 トマト部会 代表生産者 杉本 利広さん

長崎県南島原市 ながさき南部生産組合 トマト部会 代表生産者 杉本 利広さん

長崎県南島原市は、長崎市の南東70km、島原半島の南東部から南端にかけて位置し、西部は天草灘、南部から東部は有明海に面し、北部は世界有数の活火山雲仙岳の一角を構成する山地になっています。三方を海に囲まれ、活火山と共生するその自然豊かな土地が、近年、地球科学的に注目を集めています。
今月の産地だよりは、その地でモスのトマトを栽培するながさき南部生産組合についてレポートします。

海に囲まれた温暖なエリアです

海に囲まれた温暖なエリアです

山肌に広がる段々畑

長崎空港から約2時間、ながさき南部生産組合がある島原半島に入ると、美しい段々畑の風景が目に入ります。決して農業には適さないだろうと思われる、山肌の狭い傾斜地に作られた段々畑を見ると、この土地の方々の、農業へ対する情熱の深さが伝わってきます。その土地に、約100名近いメンバーを抱えるながさき南部生産組合からは、現在、トマト、レタス、玉ねぎがモスバーガーに届いています。

山肌に段々畑が広がります

山肌に段々畑が広がります

ながさき南部生産組合の考え方

ながさき南部生産組合は、1975年の発足以来、化学肥料と化学合成農薬による近代農法による農業を見直し、消費者の皆さんに安全・安心な食べ物を供給するために、生態系を重視した有機栽培や、出来るだけ農薬や化学肥料に頼らない栽培を実践しています。
「農業は環境を育み、人々の食生活を豊かにすることに本来の目的があり、安全、安心で栄養のバランスがとれたおいしい食べ物を作ることが農業に携わる者の宿命」という考え方は、まさに私達モスバーガーの食に対する考え方と一致します。

ながさき南部生産組合到着

ながさき南部生産組合到着

農家さんの自立

ながさき南部生産組合の特徴の1つに、農家さんの自立、食べていける農業の実践を目指しているということがあります。
食べていける農業というのはただ経済的なことだけでなく、本物の農業を次代に残すために、自然と共生しながら元気に楽しく農業を続けて行ける「環境」を自らの手でつくっていくことを言うそうです。
食べていける農業を実践するために環境保全型農業を行う。相反することが多い経済と環境ですが、それらの両方にメリットを持つ非常に素晴らしい考え方だと思います。

環境農業の象徴、てんとう虫のシンボルマーク

環境農業の象徴、てんとう虫のシンボルマーク

温暖な気候を利用してトマト栽培

ながさき南部生産組合のトマト部会のメンバーは現在10名、12月下旬から6月下旬まで、海に囲まれた島原半島の温暖な気候を利用して、モスのトマトを栽培しています。
ながさき南部生産組合の考え方にのっとり、除草剤、土壌消毒剤を使用せず、農薬の使用も最小限にとどめ、有機質を中心とした肥料で、よりよい土作りをもとにした、トマト作りを行っています。

大地の恵みと書かれたトマトの箱

大地の恵みと書かれたトマトの箱

トマト選果場の様子

トマト選果場の様子

今期のトマトは

杉本さんのハウスを確認します。相変わらず、整理整頓された綺麗な圃場です。今期のトマトの状況を伺います。
「うーん増えてこないねー」と杉本さん。
この冬は温暖な島原半島でも、曇天が続き寒い日が多かったため、トマトの生育はあまり良くありません。カラッと晴れず湿度が高い為、カビがトマトの樹に生えてしまう病気も発生しています。またいつもなら出荷のピークがあるのに、今期はまだそのピークがありません。
「ただ、いつもならこの辺(3月~4月)で樹が疲れちゃうんだけど、今年は出荷量のピークがないから、大丈夫。樹が元気だから、今後も平均的に出荷できるはずだよ」と杉本さんは前向きに言ってくれますが、トマト栽培には、なかなかつらい日々が続きます・・。

ハウスの様子

ハウスの様子

灰色カビが発生してしまっています・・

灰色カビが発生してしまっています・・

「瑞紅」を栽培

杉本さんは現在「瑞紅(ずいこう)」と「りんか」という2種類の品種のトマトを栽培しています。「りんか」という品種は、現在様々な産地で作られている人気の品種です。各産地で、そのトマトを試食するのですが、杉本さんの「りんか」は別物。「これがりんかですか?」と思わず聞いてしまう程に濃い味です。品種は同じでも、作る土地、作る人によって、味は変わるということを思い知ります。
しかしやはり、ながさき南部のトマトと言えば「瑞紅」です。数有るモスのトマト産地でも、この「瑞紅」をメインで栽培している産地は、ながさき南部生産組合だけです。棚持ちが良くなく、形もやや小ぶりなため、市場やスーパーで見ることの少なくなった品種ですが、糖度が高く、味は濃厚。トマトの美味しさを存分に感じさせてくれるトマトです。

たわわに実った「瑞紅」トマト

たわわに実った「瑞紅」トマト

収穫されたトマト

収穫されたトマト

トマト栽培のコツ

杉本さんのハウスを訪れる度に、美味しいトマトの栽培のコツを伺います。しかし毎回「えーそんなのないよー」と謙遜をされて、なかなか教えてくれません。
土中の良い微生物を増やす有機主体の土づくりや、根の力を強くする鎮圧栽培など様々な取り組みをされているのですが、積極的に伝えてくれることはありません。
今回は、ただひとこと、教えてくれました。
「ただ真面目に毎日、トマトをよく観察することかな・・」
トマト栽培のプロらしい素晴らしい言葉だと感じました。

トマトの様子を見る杉本さん

トマトの様子を見る杉本さん

土には微生物菌がいっぱい!

土には微生物菌がいっぱい!

安心・安全だけでない!

「一度食べたらクセになる!」というのが、トマト部会のポリシーだそうです。杉本さんも、事あるごとに「味の良いトマトを作りたい」という話をされます。「瑞紅」を栽培しているのは、その思いの表れだと感じます。
ながさき南部生産組合では、どうしても安心・安全や環境保全型農業に注目してしまいますが、味という面でも実際に高い意識で取り組んでいることがわかります。

一度食べたらクセになるトマトを作っています

一度食べたらクセになるトマトを作っています

最後にひとこと

最後に杉本さんにひとこと頂きました。
「コクのあるトマトを目指して作っています。是非味わって見てください」
杉本さんのトマトは6月下旬頃まで、東北と関東のモスバーガーに出荷中です、お店の黒板で是非、名前を探して見てください!

Text by Yagi