千葉県一宮町 JA長生施設野菜部会 越冬トマト部 代表生産者 秋葉 郁夫さん

千葉県一宮町 JA長生施設野菜部会 越冬トマト部 代表生産者 秋葉 郁夫さん

JA長生(ちょうせい)のトマト産地がある一宮町、長生村、白子町の3町村は、千葉県東部の太平洋側のほぼ中央、九十九里浜の最南部に位置し、海水浴シーズンは首都圏からの観光客で大変にぎわうエリアです。今月の産地だよりは、この地でモスのトマトを栽培するJA長生についてレポートします。

九十九里浜がすぐ近くのエリアです

九十九里浜がすぐ近くのエリアです

長生(ながいき)トマト

九十九里浜に面したこのエリアでは、昭和30年代より、海風に守られた温暖な気候と、東京に近いという地の利を生かして、野菜の施設園芸が広がりました。その中でもトマトの生産量はもっとも多く、長生(ちょうせい)という地名をとって「長生(ながいき)トマト」という名称で、今では関東の有名なトマトブランドの一つになっています。

長生トマトののぼりです

長生トマトののぼりです

周年でトマトを栽培

長生トマトの特徴の一つに、周年栽培というものがあります。2月中旬~7月の春トマト、8月~11月の秋トマト、11月中旬~2月の越冬トマトの3つの栽培期間ごとに班に分かれ、それぞれの季節にあわせて栽培しています。モスの協力産地の中で、同じ地域で一年間トマトを生産しているのは、このJA長生だけです。関東のモスバーガーでは、ほぼ途切れることなく、長生トマトに出会うことが出来ます。

収穫されたトマト

収穫されたトマト

箱の横には長生トマトの文字

箱の横には長生トマトの文字

砂地で作るトマト

3つあるトマトの生産の一つ、まずは、現在出荷中の越冬トマト部の代表生産者秋葉さんのハウスに伺いました。 秋葉さんのハウスは、海から約1kmの距離にあります。まず畑に入って驚くのは、その土質です。砂浜と同じ、サラサラの砂。まるで砂浜からトマトの樹が生えているような印象を受けます。
「これが、美味しいトマトができるポイントかな」と秋葉さん。
砂地の畑は、水はけが良く、余分な水分をトマトの樹が吸いあげないため、味がギュッと濃縮されたトマトが作りやすいと言います。
「美味しいトマトを栽培しやすい環境です」と秋葉さんは言いますが、良いことばかりではありません。水が抜けやすいということは、一緒に土中に入っている肥料も、流れやすいということ。肥料が吸えないので、それだけ小玉になりやすく、全体的な収穫量は少なくなります。
「量だと他の産地に負けちゃうから、その分、味で勝負しなきゃ」という秋葉さんの言葉にうれしくなります。実際に畑で食べたトマトは、味が濃厚で非常に美味しいものでした。

出荷を待つ秋葉さんのトマト

出荷を待つ秋葉さんのトマト

サラサラです、まるで砂浜

サラサラです、まるで砂浜

鮮度が自慢のトマト

越冬部会のトマトの美味しさのポイントは他にもあります。それは鮮度です。
この時期の、京浜エリアに出回るトマトは、主に九州産が中心です。千葉県産の長生トマトは、距離という点で圧倒的なメリットがあると言えます。
「今日収穫したら、明日には届く、だから樹で熟させて真っ赤にして出荷できる」と秋葉さんは言います。実際に収穫されたトマトは見事に真っ赤、まさに食べごろです。

秋葉さんからお話を伺います

秋葉さんからお話を伺います

トマトの状態を確認する秋葉さん

トマトの状態を確認する秋葉さん

越冬トマトの厳しさ

秋葉さんのお話を聞いていると、この時期に関東でトマトを作れば、どこよりも品質の良いものを作れる?・・・・と思ってしまいます。
「いやいや越冬のトマトは、成長期に暑さが厳しい時、冬の寒さが厳しい時に収穫という作型。日照時間が短くなり、気温が下がっていくという、条件が悪い所に向かっていく栽培なんです」と教えてくれたのは、同行してくれていたJA長生の課長の鵜澤さんです。
「施設が整っていて、技術がある人だけが作れる、まさにトマトのプロが作れる時期」という鵜澤さんの言葉に、真冬に関東のトマト産地が多くない事を、改めて認識させられました。

鵜澤さん(右)と共にトマトを確認

鵜澤さん(右)と共にトマトを確認

春のトマトの状況は・・

続いては春トマトの生産者、鶴岡さんのハウスに伺いました。2月の中旬~下旬に収穫予定のトマトが生っていて、樹は胸の高さぐらい、ちょうど4月~5月頃に出荷される分のトマトの花が咲いている状態です。ここで確認するのは、直近のトマトの状況はもちろんですが、今後のトマトが順調に出てくるかどうかです。その花の数、色、大きさなどを見て判断します。
「今年は気温が低いから、暖房はいつもより使っているけど、天気が良いから大丈夫。いまのところ順調にきていますよ」と鶴岡さんからありがたい言葉。
それぞれのハウスを巡回して、確認している鵜澤さんも同様の認識で、ひとまず安心。春も長生トマトは順調に出荷されることでしょう。

鶴岡さん(左)と鵜澤さん(右)

鶴岡さん(左)と鵜澤さん(右)

ハウス内の様子

ハウス内の様子

トマトの花

トマトの花

順調に育っているようです!

順調に育っているようです!

センサーで品質チェック

最後に訪れたのは、長生トマトの生産者160名のトマトが集まる選果場です。
長生トマトは、ほぼ周年でトマトが出荷されます。他の産地は1年のうち、何カ月かはトマトの栽培をしていない時期がありますが、長生の選果機は休む時がありません。全国でもトップクラスの稼働率を誇る選果機とのことです。
実際の選果作業では、トマトは1玉1玉、その栽培履歴が追跡できるように管理されたまま、機械を流れ、等級、サイズ別に、ロボットで箱詰めされていきます。
中でも特徴的なのは、内部品質センサーシステムです。全てのトマトはセンサーを通り、糖度、酸度、内部異常をチェックします。生産者さんごとに、その日出荷したトマトの品質がデータで確認でき、選果場の平均の数字と比べ、自らのトマトが、今どのくらいのレベルにあるかどうかが分かります。この比較が、それぞれの技術向上につながって、長生トマトの味が出来ていくのだろうだと実感しました。

選果場の様子

選果場の様子

箱詰めされたトマト

箱詰めされたトマト

最後に一言

代表して、秋葉さんより、一言頂きました。
「長生トマトは、味が自慢の他所に負けないトマトです。是非お店で食べてください!」
長生トマトは主に関東のモスバーガーに出荷中です。是非どうぞ!!

味が自慢のトマトです

味が自慢のトマトです

Text by Yagi